2017年7月28日金曜日

ウィルスの休眠システムが明らかに?


ちょっと今の季節、朝起きるのとか大変じゃないですか…?

  「もうちょっと、あと五分…」 ZZZ (-.-)

という感じでベッドや布団に吸着してしまう方も多いと思います。

帯状発疹であれ、単純ヘルペスであれ、ヘルペスウィルスの場合、活動期を過ぎると不活性化してしまい、健康な神経節の中に休眠してしまうことが非常に問題となっておりました。

今回は、「HSVウィルスが不活性化&休眠してしまうシステムに関与しているタンパク質を特定することが出来た」という記事をご紹介致します。


(1)そもそもなぜ「不活性化」するわけ?

ウィルスは、通常の生命体とは異なり、「自分の力で増殖することができない」ので、ヤドカリと同じように「宿主」を媒介して自分の個体を増やしていくわけです。

そもそも、すべてのウィルスが人体に悪影響を及ぼしているわけではありません。例えば、ヒトの胎盤の形成には、ヒト内在性レトロウイルスの遺伝子が使われていることが最近になってわかってきました。胎盤を作るときには、多数の細胞を融合させる必要があるのですが、その際に、ヒト内在性レトロウイルスに由来する「シンシチン」とよばれる蛋白質をつくる遺伝子が使われていることが明らかになってきたようなんです!(以上、ALL About「人類が繁栄できているのはウィルスと最近のおかげ?」参照)

ウィルスは自分の生存に好ましい環境となるように、様々な物質を生産していくわけですが、運悪く、この物質が人間にとって害となるものである場合、発熱・嘔吐・発疹などの反応が表れるわけです。

まぁ、簡単な例で言えば、「ムッチャ厳しい看守がいる牢獄にとらわれている脱走常習犯」みたいなもので…、

厳しい看守がムッチャ元気な間は脱走犯もおとなしくしてるけど、看守の体調が悪くなって元気がなくなっている間は、脱走犯の方がムッチャ元気になって、仲間を倍増し、牢獄を荒らし、脱獄を試みる…。そして、看守がまたムッチャ元気になると、暴れた犯罪者は一斉にシバカれ、残った犯罪者はまたの脱獄の機会を狙って牢獄の隅で静かに時を待つ…。

といった 感じになるのかもしれません(笑)。書いてて「ちょっと違うなかなぁ…」とも思ったんですが(汗)、要は…、

ウィルスは自分で増えることが出来ないので、宿主が弱った時を見計らって増殖し、その後、外部に感染することで自らの生存を確実にしようとしている

ということになるんでしょうね…。


(2)今回の記事はどんなものなの?

今回の記事は、「Protein complexes identified that control infection and reactivation」というもので、少し前の4月12日に Science Daily というWeb Magazineに掲載されていたものです。

本文は末尾にコピペしておりますので、興味のある方はお読みください☆

そこで、主な部分(以下の3つの段落)についてお話しをしていきたいと思います。

Scientists at NIH's National Institute of Allergy and Infectious Diseases previously made progress toward understanding the role of cellular protein HCF-1 in initiating HSV infection and reactivation. HCF-1 and associated proteins are recruited to the viral genome to enable the virus to replicate and spread. This previous work identified targets for the development of therapeutics to suppress infection and reactivation.
アメリカ国立衛生研究所(NIH)内の感染症関連施設は、以前、HSVの感染と再発に関係するHCF-1というタンパク質に関する研究を進めていたが、そこでは、HCF-1と関連するタンパク質がウィルスのゲノムが増殖・拡散する手助けをしていたことが見出された。この以前の研究により、ウィルスの感染・再発抑制に必要なターゲットを特定することが出来たのである。
Their latest work, with collaborators from Princeton University, identifies new HCF-1 protein complexes that play additional roles in initiating viral infection and reactivation. The scientists found they could reactivate latent HSV in a mouse model using compounds that turn on components of these HCF-1 protein complexes. Interestingly, some of these HCF-1-associated proteins also are involved in HIV reactivation from latency.
最新の研究では、プリンストン大学からの協力の下、ウィルスの感染・再発において別の働きをしている新しいHCF-1タンパク質複合体を特定することが出来た。 マウスを使ったモデルでは、このHCF-1複合体のスイッチを入れるモノを使うことにより、休眠中のHSVが活性化されることが明らかになった。面白いことに、これらのHCF-1に関連するタンパク質のいくつかは、HIV(エイズウィルス)が再活性化する時にも関係しているようである。
The researchers are continuing to investigate the protein complexes involved in promoting HSV gene expression, infection, and reactivation from latency. Identifying these complexes and understanding the mechanisms by which they function can potentially reveal additional targets for the development of new therapeutics.
研究者はこれからも、HSVのゲノム発現、感染、休眠状態からの再活性化に関係するタンパク質複合体について研究を進めていく。これらの複合体を特定し、作用機序を理解することは、潜在的に新しい治療方法の開発に対する別のターゲットを探り出すこととなり得るからである。

今回の記事の主なポイントは以上のような感じなのですが、その中で私が「オッ!」と思った点は、以下の2つの点でした。


  • HCF-1がHSV再活性化のカギを握るタンパク質であることが確認された
  • HCF-1に関連するタンパク質複合体が、HIVの再活性化にも関連している


まず、最初の「オッ!」から見てみると、HCF-1(Host Cell Factor 宿主細胞因子??)がウィルスの再活性化と深く関連しているようなのですが、う~ん、詳しくは分かりませんでした…。この記事のネタ元になっている論文では、以下のようなモデル図が示されておりまして…、


クリックして論文のサイトに移動

ということらしいのですが…、う~ん、なかなか良く分かりません…。ただ、「HCF-1がウィルスの溶解感染(Lytic Infection)や再活性化(Latency Reactivation)のカギになっているんだなぁ…」ということが分かれば十分かと思います…。

ちなみに、記事の中では、HCF-1 → HSVが再活性化された様子を示した写真がUPされておりまして、結構、「オオッ!こんな感じになるんだねぇ…」と思いました。(写真では左が休眠中の状態で、右がHCF-1により活性化された状態)



次に「オッ!」と思った点なのですが、それは、今回取り上げられている「HCF-1 がHIVの再活性化にも関係している」という点です!(^_-)-☆

厚生労働省検疫所(FORTH)によると、以下のような説明がされています。

HSV-2とHIVの感染の関係
HSV-2とHIVは互いに影響し合うことが分かっています。HSV-2感染は、新たにHIV感染症にかかるリスクを約3倍に高めます。また、HIVとHSV-2に重複感染している人は、他の人にもHIVを感染させる可能性が高くなります。HSV-2は、HIV感染者の中で最も一般的な感染症で、HIV感染者の60%から90%が感染しています。
HIV感染者(さらに他の免疫不全を持つ者)において、HSV-2に感染していると、多くの場合、症状がより深刻になり、再燃がより頻繁となります。HIV感染症が進行した場合には、HSV-2は、稀に、髄膜脳炎、食道炎、肝炎、肺炎、網膜壊死、播種感染など、さらに深刻な合併症を起こすことがあります。

HSV2とHIVの再活性化に同じタンパク質が関与しているということも、両者の関係を裏付けるものなのかもしれないですね…。


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今回は、HSVの休眠&再活性化に関与するタンパク質(HCF-1)について、簡単ですが情報を集めてみました。さほど充実したものではないですが、ご参考になれば幸いです…。

休眠中のHSVを起こす技術が見つかれば、今のバルトレックスでも根こそぎ解消できる可能性が出てきます!これにワクチンが加われば、神経節内にいるウィルスもガッツリ退治できると思うので、非常に重要な研究になると思います!

まさしく…、


という感じですね!

今回紹介した記事は、

  起きぬなら、無理矢理起こそう、ヘルペス菌

というところかと思いますが、是非、このような研究が先に進んでいくことを期待したいと考えております☆

ヘルペスの感染ならびに非活性化に関して日本語で読める資料がなかなか見つからなくて、色々と苦労をしているのですが、東大の川口先生が執筆されている論文(下図参照)は結構スゴイ参考資料になりそうだなぁ、と思いました!ただ、理解するのに結構時間がかかりそうなので、まぁ、ボチボチやっていきます… ( ˘ω˘ )

クリックして論文のサイトへ


以上が今回の投稿でしたが、如何でしょうか?


少しずつですが、研究は着実に進んでいます!
希望を胸に、私たちもしっかりと前を向いて生きてまいりましょう☆(^^♪

では、また次回の投稿でお会いしましょう♬


Understanding of herpes virus infection advanced by new research
Protein complexes identified that control infection and reactivation
Date: April 12, 2017
Source: NIH/National Institute of Allergy and Infectious Diseases
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/04/170412132354.htm
Summary:
Herpes simplex virus (HSV) infections last a lifetime. Once a person has been infected, the virus can remain dormant (latent) for years before periodically reactivating to cause recurrent disease. This poorly understood cycle has frustrated scientists for years. Now, scientists have identified a set of protein complexes that are recruited to viral genes and stimulate both initial infection and reactivation from latency. Environmental stresses known to regulate these proteins also induce reactivation.
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Herpes simplex virus (HSV) infections last a lifetime. Once a person has been infected, the virus can remain dormant (latent) for years before periodically reactivating to cause recurrent disease. This poorly understood cycle has frustrated scientists for years. Now, National Institutes of Health (NIH) scientists have identified a set of protein complexes that are recruited to viral genes and stimulate both initial infection and reactivation from latency. Environmental stresses known to regulate these proteins also induce reactivation.
Globally, the World Health Organization estimates that one-half billion people are infected with HSV-2 while two-thirds of the population are infected with HSV-1. These viruses cause human diseases ranging from oral cold sores to genital lesions to serious eye conditions that can lead to blindness. In infants, HSV can cause neurological and developmental problems. People infected with HSV also have an enhanced risk of acquiring or transmitting human immunodeficiency virus (HIV).
Scientists at NIH's National Institute of Allergy and Infectious Diseases previously made progress toward understanding the role of cellular protein HCF-1 in initiating HSV infection and reactivation. HCF-1 and associated proteins are recruited to the viral genome to enable the virus to replicate and spread. This previous work identified targets for the development of therapeutics to suppress infection and reactivation.
Their latest work, with collaborators from Princeton University, identifies new HCF-1 protein complexes that play additional roles in initiating viral infection and reactivation. The scientists found they could reactivate latent HSV in a mouse model using compounds that turn on components of these HCF-1 protein complexes. Interestingly, some of these HCF-1-associated proteins also are involved in HIV reactivation from latency.
The researchers are continuing to investigate the protein complexes involved in promoting HSV gene expression, infection, and reactivation from latency. Identifying these complexes and understanding the mechanisms by which they function can potentially reveal additional targets for the development of new therapeutics.
Story Source:
Materials provided by NIH/National Institute of Allergy and Infectious Diseases. Note: Content may be edited for style and length.
Journal Reference:
Roberto Alfonso-Dunn, Anne-Marie W. Turner, Pierre M. Jean Beltran, Jesse H. Arbuckle, Hanna G. Budayeva, Ileana M. Cristea, Thomas M. Kristie. Transcriptional Elongation of HSV Immediate Early Genes by the Super Elongation Complex Drives Lytic Infection and Reactivation from Latency. Cell Host & Microbe, 2017; 21 (4): 507 DOI: 10.1016/j.chom.2017.03.007

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