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2017年1月16日月曜日

ヘルペス治療 最終兵器(2)

先の投稿で、TheraVaxとProfaVaxについて書きました。

 *「ヘルペス治療に向けた最終兵器(1)」はこちらから

今回は、昨年行われた TheraVaxの治験(Phase 1)について報告したいと思います。


【TheraVax Phase 1 Trial】

New, Promising Herpes Vaccine: Interview With Dr. William Halford
By Josh Bloom — October 17, 2016

THE AMERICAN COUNCIL ON SCIENCE AND HEALTH
http://acsh.org/news/2016/10/17/new-promising-herpes-vaccine-interview-dr-william-halford-10313

記事はBloom記者がワクチンの開発責任者である Dr. Halford に対して行ったインタビューをまとめたもので、昨年(2016年)に実施した治験Phase 1についての詳しい情報が記載されています。

ここで紹介するには少し長いので、要点だけまとめてみたいと思います…。

(1)治験の場所について

まず、TheraVaxの治験Phase 1ですが、どうやらアメリカ国内で行われたわけではないようです…。

記事の中には、「Federation of St. Kitts & Nevisで実施した」と記載されておりまして、Google MAPで調べてみると…、

  フロリダのかなり南で、ドミニカの近く

という感じのところのようです。

Wikipediaで調べてみると、最も新しく独立したミニ国家のようで、以前は砂糖の生産を大きくやっていたようです。

まぁ、アメリカではFDAからGOサインをもらうのは非常に大変でしょうし、「それなら、治験に関する法律がゆるい国で治験をやって、データの蓄積をやってしまおう!」ということなのかもしれません(ちょっとそう考えるとコワイなぁという気もしますが… 汗)。


(2)治験の内容について

実施した治験の内容は、以下の通りのようです。
  • 実施時期:不明(おそらく2016年の8月か9月ぐらい…?)
  • 対象人数:20名(HSV2に感染していた患者)
  • 接種回数:3回(最終的に3回接種を受けたのは17名)
一般的に治験は通常Phase 3まで行われ、それぞれ…、

第1相(フェーズ1)
少人数の健康成人で、ごく少量から少しずつ「薬の候補物質」の投与量を増やしていき、安全性について調べます。 
第2相(フェーズ2)
「薬の候補物質」が効果を示すと予想される比較的少人数の患者さんで、有効性、安全性、使い方(投与量・投与方法など)を調べます。 
第3相(フェーズ3)
多数の患者さんで、有効性、安全性、使い方を確認します。 
https://www.takeda.co.jp/ct/ から引用)
を目的として行われるようですので、今回のこのPhase 1も少人数の患者を対象に安全性の確認を行ったようです。それにしても、20人というのは少なすぎる気もしますが…。


(3)治験の結果について

治験の結果が出るのは「8か月後」のようで、今のところは、

  「HSV2用のワクチン接種を実施し、接種直後の反応をまとめてみた」

ということのようです。

まぁ、最終報告は8か月後に譲るとして…、今のことろの結果は、
  • 3回接種を受けた17名全員がバルトレックスなどの抗ヘルペス剤よりも高い効果を実感した
  • 症状の頻度が、バルトレックスなどによる抑制療法を受けていた時の約3分の1になった
    (これは、別のサイトから探してきました…)
ということのようでs…。

いずれにしても、もう少し長期的な視点から結果を待つ必要がありそうです。


(4)その他

ただ、この記事の中で、HSVウィルスの排出について述べているところがあり、
Valtrex has limited use in reducing shedding; by most accounts about a 2-fold reduction in shedding. We expect that, given the reductions in symptoms participants are reporting, that the live Theravax HSV-2 vaccine would reduce shedding by 10 to 100-fold, but until we make those measurements, that is little more than speculation
詳しい調査もやっていないので、単なる推測にすぎないけど…、バルトレックスはウィルスの排出を半分ぐらいしか抑えることができないけど、このTheraVaxは10分の1から100分の1にウィルスの排出量を減らすことができる
 といったことも予想しているようです。

最後に、この記事で「オオッ!」👍と思ったのが…、記事の最後に記載してある以下のやり取りです。

この記事の記者である Mr. Bloomが
Under the best of circumstances, what is the earliest that the vaccine would be available to herpes sufferers?
「ヘルペスで苦しんでいる人にワクチンを届けるのはいつ頃になるのでしょうか?」 
という非常に気になる質問をDr. Halfordにしているのですが、これに対して、Dr. Halfordは…
Next year.
と、実にアッサリと答えています!

すかさず、Mr. Bloom(この記事の記者)も、
You're kidding, right?
とツッコミしているのですが、全く平然と、
No, I'm not.
と返答していることから、ワクチンについてよほどの自信があるのでしょうね。(^^♪

事実、この記事ではTheraVaxの対抗馬であるGen-003(Genocea Biosciencesが開発中)の効果について結構強く反論しており、
HSV2のグリコプロテインDをベースとして開発されたワクチン(例えば、Gen-003やHerpV)に関する治験は、この30年間で行われた6回行われてきたが、そのすべてに失敗している。同じ方法でワクチンの治験を実施する意味は殆どなく、新しいアプローチでのワクチン開発が必要だ
とまで述べています。

そうは言っても、「アメリカFDAから治験実施許可をもらうのに数年かかるので、まずは比較的規制がゆるい国で治験をやってデータを集め、ワクチンの有効性と安全性を証明しよう」という強硬的な手段には、思わず「う~ん…」と考えてしまうところもあります…。

ただ、世界中で非常に多くの人がHSV1、2の感染で苦しんでいる現実を解消するには、これくらいの強硬手段が必要なのかもしれませんね…。(う~ん、難しい問題ですね…)


ヘルペス治療 最終兵器(1)

以前、「ICP0 HSVワクチン研究」というタイトルで、2つほど記事をUPしていました。

 *過去にUPした二つの記事は、以下のリンクからアクセスしてください。

  https://houseofherpesians.blogspot.jp/search/label/ICP0


過去に書いた記事でも説明していたと思うのですが、ICP0 HSVワクチンは今現在開発が進められているワクチンとは全く方向性が異なるものとなっており、その違いは以下の2点にまとめることができます。


  • 現在開発が進められているワクチン(例えば、HerpVなど)

    HSVウィルスを構成するタンパク質の中で特徴的かつ無毒なものだけを取り出し、ワクチンとして体内に注入する。

    したがって、「HSVウィルス・タンパク質の一部がワクチンを構成する」

    のですが…、
  • ICP0 HSVワクチン(現在は別名で開発中!)

    HSVウィルスを構成するタンパク質の中で、毒性を表すものだけを切り取ることで無毒化し、ワクチンとして体内に注入する。

    したがって、「ワクチンを構成するタンパク質とHSVウィルスはほぼ同じ」

単純に言えば、「現在一般的に開発されているワクチンは、ウィルスの一部分をコピーした図案を基に作られたもの」であるのに対して、「ICP0は、ウィルスをほぼフルコピーした図案を基に作られたもの」として考えることが出来るでしょう。

このような ICP0 HSVワクチンなのですが、開発者である Halford博士(南イリノイ大学医学部)が2014年ごろから立ち上げた「Rational Vaccines」という会社を中心に開発が進められています。


当初は、研究費用を寄付してもらうことを目的としていたようですが、資金が集まるにつれて本格的に研究・開発を進めていくようになったようです。

昨年ごろからは、「ICP0」というコードネームを「TheraVax」、「ProfaVax」という名称に変更し、HSV ABVIC TEST(HSVのタイプを識別するための検査方法)と共に研究・開発を進めているようです。

ここで、特に TheraVaxとProfaVaxについて説明をまとめてみます。

  • TheraVax

    TheraVaxはHSV1もしくはHSV2にすでに感染している方を対象としたワクチンで、いわゆる「治療」を目的としたものです。同ワクチンについて解説しているホームページを見ると、HSV1用とHSV2用の2種類のワクチンが開発されているようで、それぞれHSVウィルスが持つタンパク質の99%以上で構成されているようです。
  • ProfaVax

    ProfaVaxはHSV1もしくはHSV2にまだ感染していない方を対象としたワクチンで、いわゆる「予防」を目的としたものです。TheraVaxと同じく、HSV1用とHSV2用の2種類のワクチンが開発されているようで、それぞれHSVウィルスが持つタンパク質の99%以上で構成されているようです。
TheraVaxに関しては、最近、小規模な治験が行われたようです。結果については別に書きます!ProfaVaxについては、TheraVaxの治験が完了してから治験を開始するようですので、まだまだ先になるかと思います…。

これら2種類のワクチンが認められて、たくさんの人がワクチン接種を受けれるようになれば、ヘルペスが関係する病気・症状はほとんどなくなってくると考えられます。

やっと、現実的に「希望」と呼べるものが出てきたようです!アメリカでの承認が先なので、まだまだ時間はかかるでしょうが…、この研究・開発が日本でも承認される日が来ることを切に願う次第です…。

2011年9月16日金曜日

ICP0 HSVワクチン研究(2)

昨日UPしたICP0(ゼロ)ワクチンに関する情報の続きです…。

ちょっとネットをサーチしていたら、ICP0に関する短い記事(多分オーストラリアの記事?)を見つけましたのでUPしてみました。


まとめてみると…、

2011年9月15日木曜日

ICP0 HSVワクチン研究(1)

実は、銭形個人が注目している研究が、このICP0(ゼロ)を応用したワクチン開発研究なんです…。

私も専門ではないのでよく分からない部分も多いのですが…。

どうやら、このICP0というのは、HSVウイルスの増殖と潜伏感染からの再活性化と深くかかわっている遺伝子(?)のようで(スミマセン、詳しくはわかりません…汗)、この遺伝子を機能しなくすることにより、弱毒化(Attenuated)したHSVウイルスを作ることができるようなんです…!

ここまで読んだ人は、おそらく、「ふ~ん…」という反応なんでしょうが、この研究のスゴイところは、その動物実験の結果なんです…。

その一部を見てみると…