2017年6月1日木曜日

ヘルペスワクチン最前線 08: 2つでダメなら3つで…!




アメフトでランナーを追いかけているプレーヤーですが…、まさしく、「一人でダメならチームプレーで…」という考えを良く表していると思います。

さてさて、お待ちになっていた方もいらっしゃるかもしれませんが…、今回の「ワクチンリスト解説 第8弾!」では、アメリカ ペンシルバニア大学の Perelman School of Medicine で研究が進められている、HSV-2 Trivalent Vaccine についてご紹介したいと思います。


まず、ペンシルバニア大学 Perelman School of Medicineですが、アメリカ東海岸にある大学で、ニューヨークよりもやや南にあるペンシルバニア州にある大学です。ホームページは、こんな感じですね!


 UPENN Perelman Med School HP



まぁ、Perelman School of Medicine の外観をGoogleで検索すると、


 Perelman School of Medicine


といった感じの大学のようです!いやぁ、スゴイ大きそうな大学ですよねぇ… ( ゚Д゚)

まぁ、大学の紹介はこれくらいにしておいて…、今日のお題の HSV-2 Trivalent Vaccine についてザックリとお話ししていくことにしましょう。


(1)Herpvac治験失敗からの進化!

HerpvacというHSV2に対応するためのワクチン治験が失敗したことは、このブログでも何度か取り上げたことがあるので、ご存知の方も多いかと思います。簡単に復習しておくと、Herpvacは、HSV2ウィルスの表面にあるグリコプロテインDというタンパク質をターゲットに抗体を作るように設計されていたのですが、最終的な治験(Phase 3)の結果、全体としてあまり効果が高くなく、女性のみに効果が確認された、ことから、中止となってしまいました…。

まぁ、これに対しては色々と意見もあるようなのですが、よくある批判としては…、

識別するためのターゲットはたくさんあるのに、何でグリコDさんだけやねん?それに、ターゲットはたくさんあるっちゅーのに、何で一個だけしか使わへんの?( ゚Д゚) 関西弁でお読みください…

ということは皆さんもすぐにわかることだろうと思います。

これについては、このブログでも再三取り上げている Rational Vaccines の Halford 博士が良く指摘しているところでして…、

くっ付くところがよーけあるんやったら、一個だけとか、しみーったれたこと言わんと、ドーンとよーけイかなアカンでよ!ドーンと!
( ゚Д゚) これも関西弁でお読みください

という理由から、「HSV2ウィルス自体を無毒化したもの(=表面のタンパク質を殆どそのまま持っているもの)」を使って、生ワクチンを研究・開発しているようなんですね…。

まぁ、ですが、そうなると、当然のことながら…、「もし、間違ごうて、感染したら…、どないするんで?」(;・∀・) ということになるわけでして…、それからすると、

 そしたら、アカンところを取って、エエとこだけ使こうたらエエんとちゃいますか?( `ー´)ノ

となるわけですね。

もちろん、この流れでサブユニットワクチンやDNAワクチンが開発されているわけなんですが、今回のワクチンは…、簡単に言うと、

1個でアカンのやったら、2個でどないやねん?2個でもアカンのやったら、3個でやってみよか?(^^)/

ということになるようなんですね。

これまでにも、2個のグリコプロテインをターゲットとしてワクチンの開発を進めてきたプロジェクトもあるようなんですが(例えば、GEN003など)、結果を見ると、

「ウワッ、ムッチャすごいやん!」という感じではなく、アジュバント(活性剤)の助けを借りてやっと何とか効果が出ている

といった感じが否めないと思います…。「それじゃぁ、そのターゲットを3つにしてみよう!」ということで研究・開発が進められているのが、今回の HSV-2 Trivalent Vaccine のようなんです。


(2)では、今のところの結果は?

気になる現状なんですが、最新の情報が2017年1月に出されておりまして、結構、アメリカでは注目を集めているようですね!今の段階では、勿論、実験室段階で、実際の患者さんを使って治験を行うのはまだまだ先になると思いますが、結構、効果としてはイイかもしれないんです!(^^)/

発表されている論文は、以下のモノなんですが…、




その内容を簡単に説明すると…、

  • 実験には、グリコプロテインD2、C2、E2(gD2、gC2、gE2)の3種類のタンパク質に対応する抗体を作るためのワクチンを使用した。これら3つのタンパク質がもっている作用は以下のとおり。

    • gD2は、HSV2が細胞内に侵入する時に作用するタンパク質
    • gC2、gE2は、HSV2が免疫から逃れることを可能にしているタンパク質

    なので、最終的にはこのワクチンは、細胞への侵入と免疫からのステルス化を防ぐことができると期待される。
  • 実験は、アカゲザルとギニーピッグ各2体使って行った。その結果を簡単にまとめてみると…、
    • アカゲザルは、HSV2にはあまり感染しないが、強制的に性器内にHSV2ウィルスを皮下注射したところ…、
      • ワクチン未接種群では、短期間・中程度の感染が見られたが、
      • ワクチン接種群では、感染は全く見られなかった
    • ギニーピッグは、HSV2に感染しやすく、発症も激しいが、この三種混合ワクチンだと、ヘルペスの発症を97%、99%抑えることができた

ということのようなんです!

HSVの実験で、よくギニーピッグやアカゲザルが使われるようなんですが、それぞれ理由があったんですねぇ…。勉強になりました… (^^)/

もうちょっと読み込んでいかないと分かららない部分も多いんですが…、どうやらアフリカ減産HSVウィルスに対する効果も調べているようでして…、その結果を見ると…、



という感じになっているようです…。

この表はワクチンを加えていない(Mock)と三種混合ワクチン(Trivalent)を比較したもので、
  • 縦軸=血中ウィルス濃度
  • 横軸=HSVウィルスの種類
    (1~4がアフリカ原産でムッチャ強力、NA Strainは北アメリカ産の普通のヤツ
なんですが、結果を見ると、結構、期待できそうな気もしますね!アフリカ産のHSVは、感染すると非常に劇症のようで、感染すると非常に大変らしいんですね…(以前、何かの本で見たところによると…)。その強力なウィルスをかなり減らしていること、北米産のウィルスでもかなり血中ウィルス濃度の減少に効果が見られることから、なかなかの効果が期待できるのではないか(←かなり高飛車ですね…)と思います。


今後の研究・開発に期待したいところですね☆(^^♪


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今回の論文は、ちょっと専門用語が多くて、詳しく解説できなかったところも多いんですが…(汗)、大筋に関してはご報告できたかと思います☆

ヘルペスは人間の歴史が始まって以来、ず~っと続いている感染症で、最近では、HIVの感染を高める可能性があったり、アルツハイマーの原因因子として取り上げられたりしています。この長年にわたるミクロの戦いに対して、現在も多くの研究者の方々が頑張ってくれています!


是非、皆さんも(私もそうですが…)、前を向いて、生きて参りましょう


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