最新ヘルペス ワクチン開発情報第3弾です☆
「グリコ」といえば、皆さん、当然のことながら、あの「グリコ」を思い出しますよね…!
今回ご紹介するグリコは、ちょっとミクロなグリコでして… (^^♪
グリコプロテインD
というタンパク質なんです…。
「グリコ」の語源は海のカキに含まれているグリコーゲンから来ているようなんですが…、このグリコプロテインも同じような語源から来ていると思います。
というわけで、このグリコプロテインなんですが、ちょっと前に大阪大学が「単純ヘルペスウイルス感染の分子メカニズムを解明」というお題で発表したことを記憶されている方も多いと思います。以前の研究では、HSVウィルスが細胞膜を通過する時にグリコプロテインDが重要な働きをしていることが分かっていたのですが、大阪大学の研究では、グリコプロテインDとBの両方が細胞膜をすり抜けていくのに重要な役割をしていることを発見したのです☆(^^♪
今回取り上げる HSV-2 ΔgD-2ですが、このグリコプロテインD-2(ΔgD-2)を削除した不活性化ウィルスを体内に注入することで、抗体を効率よく作り出すことを目的としたワクチンなんですね!(^◇^)
開発しているのは、Einstein Med CollegeのWilliam Jacobs博士なんですが…、そのEinstein Medical Collegeっていうのは…、
医学分野でムッチャ優秀な人たちが集まっている大学@ニューヨーク
なんです。ちなみに、建物は(一部ですが…)こんな感じみたいですね…
その研究なんですが、PubMedで調べてみても検索結果が1件のみとなっており、まだまだ治験に進んでいくまでには時間がかかる研究かと思います…。
そこで今回は、
- 2016年発行
HSV-2 ΔgD elicits FcγR-effector antibodies that protect against clinical isolates
- 2016年発行
Herpes simplex virus-2 ΔgD vaccination primes robust cellular immunity with memory Th17 cell recall following challenge
という2つの論文を参考にしてみました☆
まず、一つ目の論文ですが、この要旨を見てみると…、
A single-cycle herpes simplex virus (HSV) deleted in glycoprotein D (ΔgD-2) elicited high titer HSV-specific antibodies (Abs) that (i) were rapidly transported into the vaginal mucosa; (ii) elicited antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity but little neutralization; (iii) provided complete protection against lethal intravaginal challenge; and (iv) prevented establishment of latency in mice. However, clinical isolates may differ antigenically and impact vaccine efficacy. To determine the breadth and further define mechanisms of protection of this vaccine candidate, we tested ΔgD-2 against a panel of clinical isolates in a murine skin challenge model. The isolates were genetically diverse, as evidenced by genomic sequencing and in vivo virulence. Prime and boost immunization (s.c.) with live but not heat- or UV-inactivated ΔgD-2 completely protected mice from challenge with the most virulent HSV-1 and HSV-2 isolates. Furthermore, mice were completely protected against 100 times the lethal dose that typically kills 90% of animals (LD90) of a South African isolate (SD90), and no latent virus was detected in dorsal root ganglia. Immunization was associated with rapid recruitment of HSV-specific FcγRIII- and FcγRIV-activating IgG2 Abs into the skin, resolution of local cytokine and cellular inflammatory responses, and viral clearance by day 5 after challenge. Rapid clearance and the absence of latent virus suggest that ΔgD-2 elicits sterilizing immunity.
ということが書いてありまして…、この内容をザクッとまとめてみると、
- これまでの研究では、
- HSV-ΔgD(HSVグリコプロテインD)を削除した不活性化生ワクチンは、HSVに特化した抗体を作り出すのに有効で、性器粘膜にサッと移動して、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity(抗体依存性細胞傷害)を生じるので、性器を介して人為的にHSVを感染させても完全に防ぐことができ、ウィルスの潜在化も同時に防ぐことが可能であることが分かっていた。(これらは、すべてマウスの実験によるものです)
- 今回の研究では、そこから更に一歩進めて、よりキツイ症状を示す「南アフリカ産HSV(SD90)」を使った実験を行った。HSV-ΔgDワクチンを投与したラットに致死量100倍に相当するSD90を注射してみたところ…、
- 股関節部分の神経節に潜伏したウィルスはゼロ
- HSVに特化したFcγRIII- and FcγRIV-activating IgG2(よくわかりませんが…汗)が症状が起こっている皮膚に集まり、局所的な毒性や炎症を解決
- 5日間で炎症などが解消したことが分かった。
ということのようです!
この中でやっぱりすごいのは、
致死量の100倍にあたるウィルスにも対抗でき、加えて、神経節に潜むウィルスまで撃退した!というところですね☆(^^♪
二つ目の論文要旨を見てみると、
Complete protection from disease and the establishment of latency is observed following either HSV-1 or HSV-2 challenge of HSV-ΔgD-vaccinated mice. We have also previously demonstrated that HSV-2 ΔgD elicits a protective, broadly functional antibody response. We hypothesized that HSV-2 ΔgD vaccination also primed T cell immunity, contributing to vaccine-induced protection. We observe both CD4 and CD8 T cells are activated by vaccination, and contract to establish a stable memory population. Vaccine-induced memory CD8 T cells are polyfunctional cytokine-producers with 55 percent specific for the immunodominant HSV gB498-505 epitope. Memory CD4 T cells primed by vaccination are quickly recalled to the infection site following challenge and exhibit a Th17-dominant phenotype with 60 percent of recalled cells producing IL-17A. We also determined that CD4 T cell help is required to stabilize the germinal center B cell population and to elicit protective antibodies following vaccination. Together, our data demonstrate HSV-2 ΔgD vaccination induces robust cellular, as well as humoral, immunity and likely an ideal vaccine vector.
といったことが書いてあり、要約すると…、
- HSV-ΔgD(HSVグリコプロテインD)を削除した不活性化生ワクチンにより、HSV1-2いずれにおいてもその発症と潜在化を完全に防ぐことができた
- 加えて、CD4、CD8などの免疫T細胞が活性化されるだけでなく、(活性化された?)CD8 T細胞の55%がその免疫記憶を保持しており、CD4について60%が記憶を保持していた(← ちょっと知識不足で2つ目の要約は自信がありません…)
ということになるようです。ザクッと言うと、
グリコプロテインDワクチンで症状だけでなく眠っているウィルスもやっつけることができた。それに加えて、HSVに特化した免疫機構も強化することができた!ということになるかと思います。
これまで紹介したワクチン研究が、免疫機構を使って症状を抑えることをメインとしていたのに対し、この研究は…、
体内からHSVウィルスを一掃し、免疫もUPする
ことを目的としているので、実際に治療で利用できるようになれば、すっごくイイと思いますね☆(^^♪
これから数年後には治験に進んて行くことになるでしょうが、是非、製品化できるように頑張ってほしいと思います☆(^^)/
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ちなみに…、お菓子のグリコに関する誕生秘話が載っておりまして、ちょっと良いお話しかなぁと思ったので、引用してみました…。お時間がある時にでも読んでみてください☆
大正時代、のちにグリコ創業者となる江崎利一は、佐賀で薬種業を営んでいました。
ある日、漁師たちが牡蠣の煮汁を捨てるのを目にします。
「牡蠣にはエネルギー代謝に大切なグリコーゲンが多く含まれている」という過去に読んだ記事を思い出しました。
「栄養豊富な煮汁を捨てるなんてもったいない。なんとか活かせないだろうか」。
最初は、薬への利用を考えたそうですが、それよりも病気の予防が第一、子どもたちの健康づくりに活用することを決めました。
「“国民の体位向上”に貢献したい。そのためには、子どもたちが喜んで食べてくれるものがいい」
このひらめきで、グリコーゲンの入った栄養菓子「グリコ」が誕生したのです。
https://www.glico.com/jp/enjoy/contents/glico02/
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