今回、参考にした文献は、
Future prospects for new vaccines against sexually transmitted infections
Sami L. Gottlieb and Christine Johnston
http://journals.lww.com/co-infectiousdiseases/Fulltext/2017/02000/Future_prospects_for_new_vaccines_against_sexually.11.aspx
です。
2017年2月付で公開になっているものなので、「最新の情報が載ってるんじゃないかなぁ…」と思って読んでみました。(今は2017年1月なので、多少違和感はありますが… 汗)
論文自体は、いわゆる「性感染症に対するワクチン研究」という幅広いものなので、ヘルペスについて記載されているところのみをまとめてみました。
(1)現在、治験が開始されているHSVワクチン研究は?
論文では、以下の5つのワクチン開発について、その概要がまとめられていました。
- Herpevac
DNAワクチンでHSVウィルスの一部を基にワクチンをデザイン
治験Phaze 3終了(一部の女性にのみ効果が確認された)
現在は打ち切り - GEN-003HerpeVacと同じDNAワクチン
ヘルペス発症頻度が65%、ウィルスの排出が50%減少した
現在、Phase 2が進行中 - VCL-HB01DNAワクチン
治験Phase 1/2が終了
Phase 2が進行中:2018年完了予定 - COR-1ADMEDUSというオーストラリア(?)の会社が開発を進めている模様
Phase 1では安全性が確認されている模様
Phase 2では発症頻度が90%以上減少した
ただし、具体的な効果のほどは不明…
* 詳しくは、こちらを参照してください - HSV529
現在、Phase 1が進行中
今現在最有力されてる唯一の生ワクチン
ウイルスの増殖、発症、排出も抑えることが可能
(2)全体的な進行度はどうなってるの?
これら5つのワクチン開発ですが、進行度をまとめてみたのが以下の図になります。
赤枠で囲ってあるのが、HSVに関連したものです。
一番右にPhase 3 Trialとしてあるのが、開発中止となった HerpeVacです。
今、Phase 2として開発が進められている GEN-003、VCL-HB01、COR-1はいづれもウィルスの一部を用いて作成しているDNAワクチンでして、その効果を上げるために補助剤(Adjuvant)を使うことが多いとされています。
その一方、生ワクチンであるHSV529は、治験の承認までに時間がかかったようで、今のところPhase 1での開発が進められています。おそらく、ウィルス価も十分高いと思われるので、Adjuvantを用いる必要はないと思います…。
やっぱり、「無毒化されたウィルス」を使うので、かなり危険性についてのチェックが厳しかったのかもしれませんね…。
(3)その他
残念ながら、個人的に押している TheraVax はリストにも載っていなかった(涙)のですが、HSV529生ワクチンの開発が進められているようで何よりです!
私個人も、初めてヘルペスについて勉強し始めた時に、「何で生ワクチンを作ろうとしないんだろう…」という素朴な疑問を持っていました。おそらく、安全性の確保や性感染症の拡大を防ぐため、などの理由もあったのでしょうが…、やっと効果的なワクチン開発に向けて舵が切られてきたような気がします。
現実的に「治療」と呼べるものがやっと出てきた気がしますね (^^♪
今回取り上げたこの論文を読んでみて「ああ、良かったなぁ」と思えたのが、HSVワクチンの開発について述べられている以下の部分です。
All of these vaccine studies are providing valuable information about immunity to genital HSV and insights into optimal trial design for future Phase III trials. Current vaccine candidates target HSV-2, but identification of cross-reactive epitopes against HSV-1 and HSV-2 raise the possibility that a vaccine targeting both HSV types could be developed. In addition, genomic sequencing of HSV-2 from different regions, revealing many highly conserved antigens, could ensure a geographically unrestricted vaccine.
この引用部でも述べているように、今現在行われているワクチン研究を通して、将来は、
- HSV1、2の両方を対象としたワクチン
- 地域差を乗り越え、共通して利用できるワクチン
の開発が可能になると期待できます。
ホント、これからは色んなことが可能になると思いますので、期待したいところですね!(^^)/
ただ、今回、この論文を読んでみて思ったのですが、私も VCL-HB01、COR-1 については全く知らなかったので、「あぁっ、不勉強だなぁ・・・」としみじみ感じてしまいました。技術は日進月歩で進んでいるのですが、私の方にナマケモノだと追いつくのにも精一杯という感じです… (´・ω・`)
また、これらのワクチンについては時間があるときに調べてみたいと思います…。
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